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何も起こらない。ニズは迫ってきている。
だが、指輪を填めても何も起こらない。
「何――」
―何でだよ!― そう叫ぼうとした瞬間、あるイメージと言葉が頭に流れた。
そのイメージとは――
「っ、やるしかねぇか……堕ちろ!」
そのイメージとは、力のイメージ。不意に流れ込んできたそれを、無我夢中で再現する。
叫ぶと同時に闇色の結界がニズとシークの間に現れる。
「なっ」
ニズは即座にその場を離れ、どんなことにでも対処できるように身構える。
しかし、いつまで経っても何かが起こる様子はない。
それにニズは訝しげにシークを見る。
「これは……どういうことだい?」
「……何がだよ」
シークはニズを睨みながら、ゆっくりと後退る。
「……何でもないさ。じゃあ、子供の遊びは終わりにするよ」
ニズは短剣を抜きながら睨み付ける。同時に放たれた殺気にシークは怯む。
だが、退けない。
止めなければならない。
ジオが出来なかったことをしなければならない。
だから、戦う。
「堕ちろ!」
今度は形を想像した状態で結界を造り出す。
その形は――槍。
何もない場所から瞬間的に現れるその攻撃は、武芸の達人でも避けることはできない。
そのようなスピードで繰り出される攻撃を、油断していたニズが避けられるわけがない。
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