一章

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「ぐぅっ」  避けられなかったニズの腹に拳大の穴が空く。  血は流れてこないが、尋常ではない激痛がニズを襲う。  苦虫を噛み潰したような顔をしていたサーツが動き出す。  それと同時にジオは地面に落ちる。 「っ、堕ちろっ」  ジオが落ちる前に球体型の結界で包み込む。  サーツはその隙を突いてニズを抱える。  それに気付いたシークは慌てて結界を張り、捕獲しようとする。 「堕ちろ」 「効かん」  サーツはシークが作り出した結界を易々と切り裂いてしまった。  シークが続けて結界を作ろうとした瞬間、ピートが高速で魔法文を詠唱する。 「魂に宿りし悪の心よ、善意を巣食え  deed to cruel “闇に巣食われろ”」  詠唱した魔法の効果は、肉体強化。対象はサーツ。  サーツが先程とは比べ物にならない速さで駆け出す。  どんなに結界が速く展開しても、相手の動きが読めなければ意味がない。 「きょ、今日はこれで帰りますっ。ですが、そ、それが宝具であるとわかった以上、いずれ取り返します。そ、それは僕たちの元にあるべき物ですから」  言いながら、ピートは懐から石を取り出す。  それに魔力を込めると瑠璃色に光りだした。  そして、次の瞬間には3人は消えていた。  シークはいなくなったのを確認してからジオの元に駆け寄り、結界を解除する。
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