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風や草が歌う、広大で自然豊かな草原。
そこに草や風による優しい音とは全く別の、けれどもどことなくその空間と調和する音がその世界を支配していた。
音の正体は2人の少年の持つ木剣がぶつかり、弾きあう音。
「やるなっ、シーク!」
名前を呼ばれた少年は木剣を上段から振り下ろしていた。
名前を呼んだ方の長身の少年は、相手の剣を避けながら木剣で突きを放つ。
「っ、そりゃあな!」
シークと呼ばれた、燃え盛る炎のような紅い眼をした少年は、その突きを剣腹でいなし、銀色の髪を揺らしながら蹴りを繰り出す。
突きを放った方の少年は、その蹴りを剣を持っていない右手で受け止める。
そして、受け止めると同時にシークの首筋に剣を当てる。
「でも、オレの勝ちだ」
剣を突きつけられたシークが剣を降ろし、座り込んだのを見た少年は、ニヤリと笑いながら話しかけた。
肩で息をしていたシークはそれを見て、吊られたように軽く笑う。
「だな。やっぱり、まだ勝てねえや」
「けど、いい線いってたと思うぜ?」
金に輝く髪の少年、ジオは肩を上下に揺らしながら座っているシークの横に寝転がる。
「上から目線なのがムカつくな」
「いや、普通に年上だぞ?」
「どうでもいい。ところでジオ、ちょっと行きたい所があるんだけど、一緒に行かないか?」
あっさりと話を終わらせて息を整えたシークは、ゆっくりと立ち上がって伸びをする。
「何処に行くんだ?」
横になったまま、伸びをしているシークを見る。
その問いにシークは、白い頬を吊り上げて笑っただけで何も答えない。
「ふーん、面白そうだな。わかった、着いていってやるよ」
「さっすが、ジオ。話がわかるな」
ジオが了承の意を示すと、笑いながらジオに手を差し伸べ、立ち上がらせる。
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