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王都シュトラスから遠く離れた、辺境の地にある遺跡にその二人は訪れていた。
その遺跡は、蔓や枝が扉に絡み付き、入り口を塞いでいるため、今まで誰も訪れた者がいないように感じられた。
「おいおいおい、大丈夫かよ、ここ……」
入り口から離れた所に立ったジオは、薄橙色の顔を青くしながら全体を見ていた。
それに対し、シークは頭の後ろで手を組み、平然と入り口に向かっていく。
「お前、びびりすぎだろ。大丈夫だよ、魔物もいねえから……多分」
「魔物なんかにはびびってねえけどな?ただ、見るからに幽霊が居そう……って、言ってるそばから何やってんだ!」
シークが扉に絡み付いた蔓や枝を伐っているのを見て、慌てて叫ぶ。近寄りはしないが。
「ん?何って……見ての通り蔓を伐ってるんだよ」
大声で話し掛けてくるジオの方を見ず、蔓を伐りながら問いに答える。
「それはわかってんだよ!何でそんなことしてんのか、聞いてんだよ!」
「煩いなあ……あ、開いた」
蔓を伐っていた剣が何かボタンのような物に触れたのか、扉が蔓を押し退け、引き裂きながら開いた。
それを見たジオはより一層、顔を青くする。
「あー、怖いなら来なくてもいいぜ?一人でも大丈夫だし」
後ろを振り返ったシークは、ジオの顔が青くなっているのに気付き、声をかける。
けれど、ジオはそれが気遣いではなく挑発に聞こえたらしい。
「怖くねえって言ってるだろ!上等だ、オレ一人でも大丈夫だってとこを見せてやる」
そうしてジオは静かで陰鬱とした空気が充満する遺跡に入っていった。
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