1章 噂

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「……さ、最初に……【死人還り】って噂……聞いた事あるわ、よね?」 「……又聞きの又聞き程度には」  つまり殆ど知らない。 呼び名からして只事ではないだろうな、と予想は出来るけど。 「それでもいいわ。で、アタシはこの街に来てまだ日が浅くて、ちょっと興味が沸いちゃって……話を色々聞いて回って、噂の発信地と思われる場所を割り出したのよ……」  「そこまでは、良かったんだけどね」と小声で呟くと、オデットさんの顔がみるみる青白くなっていく。 ついでに、未だに私の手を握ったままの手に、力が籠る。 「…………」  俯き、暫く黙りこくるオデットさん。 私は特に話を促さず、同じように黙って彼女の言葉を待つ。 やがて、 「……見ちゃったのよ」  消え入りそうなか細い声で一言。そう呟いた。 「……何を?」 「……人が、出てくるところ」 「……何処から?」 「……地面から」  言うや否や、オデットさんは顔を上げ、涙を溜めた琥珀色の瞳を大きく見開き、 「地面に埋まってたって事は死んでたって事よね!? 趣味で生き埋めになる人なんているわけ無いし、ドッキリにしたってリスク高過ぎだし!! それが1人じゃなくて何人もボコボコ出てきたら、そりゃもう生き返ったとしか考えられないじゃない!! 怖すぎるわよホントに!! ねえ、何とかしてよ!? ねえ!?」  一気に捲し立てた。 このカフェ、静かな事で有名なんだよなー……と、あまり関係ない懸念を抱きつつ、私は妖怪【首置いてけ】ならぬ【話聴いてけ】と化したオデットさんの話を聞き流していた。
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