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「……さ、最初に……【死人還り】って噂……聞いた事あるわ、よね?」
「……又聞きの又聞き程度には」
つまり殆ど知らない。
呼び名からして只事ではないだろうな、と予想は出来るけど。
「それでもいいわ。で、アタシはこの街に来てまだ日が浅くて、ちょっと興味が沸いちゃって……話を色々聞いて回って、噂の発信地と思われる場所を割り出したのよ……」
「そこまでは、良かったんだけどね」と小声で呟くと、オデットさんの顔がみるみる青白くなっていく。
ついでに、未だに私の手を握ったままの手に、力が籠る。
「…………」
俯き、暫く黙りこくるオデットさん。
私は特に話を促さず、同じように黙って彼女の言葉を待つ。
やがて、
「……見ちゃったのよ」
消え入りそうなか細い声で一言。そう呟いた。
「……何を?」
「……人が、出てくるところ」
「……何処から?」
「……地面から」
言うや否や、オデットさんは顔を上げ、涙を溜めた琥珀色の瞳を大きく見開き、
「地面に埋まってたって事は死んでたって事よね!? 趣味で生き埋めになる人なんているわけ無いし、ドッキリにしたってリスク高過ぎだし!! それが1人じゃなくて何人もボコボコ出てきたら、そりゃもう生き返ったとしか考えられないじゃない!! 怖すぎるわよホントに!! ねえ、何とかしてよ!? ねえ!?」
一気に捲し立てた。
このカフェ、静かな事で有名なんだよなー……と、あまり関係ない懸念を抱きつつ、私は妖怪【首置いてけ】ならぬ【話聴いてけ】と化したオデットさんの話を聞き流していた。
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