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★★★
店長にオデットさんが軽く怒られて、話は仕切り直し。
その際、漸く私の手は解放された。
「……つまり、現地に赴いて噂の真相を確かめてこい、と」
「そう、その通りよ。アタシはもう行きたくない怖い怖い……」
泣き言を漏らしつつ、オデットさんは鞄から一枚の折り畳まれた紙を取り出し、それをテーブルの上に広げた。
出てきたのはこの街とその周辺地域を記した地図だった。
「……ここにある聖堂が、噂の発信地よ」
オデットさんが指差したのは、この街の北東部。徒歩でも簡単に行けるような場所だ。
確かにそこには聖堂がある。だけど、大した規模でもなかったような……?
「ともかく。あの怪現象の真相を突き止めて、アタシに報告して。出来れば、只のインチキだという証拠を得てきて。お願い! じゃないとアタシ夜中独りでトイレに行けないの!」
最後の方は私の知った事ではないと思うけど、突っ込むのも気の毒だから黙って頷いた。
「ありがとう。恩に着るわ」
「……では、早速向かってみます。私が戻るまでは──」
そこでふと思い立ち、私は地図上のある一点を指差し、告げる。
「ここにある【アース】という会社の事務所で待っていてください。社員の人には『アリッサの依頼人』と言えば伝わりますから」
「わ、分かったわ」
オデットさんがアース社のある場所をマークしている間に、私は自分のカップに残っていたコーヒーを飲み干し、席を立った。
御代は私持ち。
こういう時は然り気無く払うとカッコいいらしい。
その後2人で店を出て、お互い別々の方向へ歩いていった。
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