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やはり大きい。   間近になると一層大きく感じる。   「黒田、お前がこの先…俺やコイツのいる世界に踏み込むなら…そのまま見てろ、そうじゃないなら…帰れ」   帽子の男を見たままで白山は黒田に言う。   これが境界線か。   これほどの殺気が渦巻く世界か。   ざわ…   体が無意識に震える。   同時に体の中の何かが暴力を渇望しているという感覚が分かる。   「らしくねぇな、魅導さん…俺がここまで来て、こんな世界を見て、退く男に見えんのかよ…」   黒田の唇が吊り上がる。   「よし、じゃあ見てろ」   白山は帽子の男に一歩近付く。   「待たせたな、しかしあんた…辻斬りの割には意外と律義なんだな…切り込む隙はあったはずだぜ」   白山の言葉を帽子の男は一笑する。   「俺は武道家だ…最低限の礼儀位は心得ている…」   「なるほど…」   互いに構えを取る。   白山は空手のポピュラーな構えに似ている構えを、帽子の男は腰を深く落とし、手をダラリと下げた様な構えだった。   そして、黒田は自分の踏み込んだ『世界』の戦いを初めて見る事となった。
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