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黒田は苛ついていた。
腫れ上がった傷が痛む度に顔を歪める。
黒田は今まで喧嘩で負けた事が無かった。
中学生になると同時に大柄だった黒田は上級生の的になった。
一対多数も無かった訳ではない、高校へ入学してからもそれは続き、いつしか番長の様な存在となっていた。
今日の喧嘩は相手の逆恨みだった。
しかし、今回はヤクザまがいのチンピラまで引き連れてきた。
相手が率いている暴走族とも関係のあるヤクザと言っていたが、定かではないし興味もない。
ただ、自分一人に数十人で襲いかかる、そんな理不尽な暴力に負けた事が悔しかった。
黒田は今まで一度として自分から喧嘩を仕掛けた事が無い。
その身にふりかかる火の粉を払って来ただけだった。
傷が痛む。
黒田の顔を踏みつけて、勝ち誇り、嘲笑う声が頭に響く。
その度に心の中で、否、体の中で、黒いモノが沸き上がる。
それを吐き出したくてたまらなかった。
自分より弱い奴を殴ってさっぱりしたい。
負けたくない。
絶対に勝つ喧嘩がしたい。
肩が触れた。
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