8人が本棚に入れています
本棚に追加
反射的に殴っていた。
サラリーマン風の男が倒れる。
周りから聞こえる悲鳴。
気が付くと黒田はサラリーマン風の男に馬乗りになる形で殴っていた。
必死に助けてと懇願する、弱々しい声を無視して殴り続けた。
殺す。
とどめをさす。
そう思って振り上げた腕を捕まれた。
邪魔者に視線を向けた瞬間、黒田は自分が殴り飛ばされている事に気付いた。
街灯にぶつかって血を吐く。
黒田の視線の先に、奇妙な色の道着を着た、赤い鉢巻きの男が立っていた。
「喧嘩がしたいなら俺が買ってやるよ…」
その男は首を傾けて『ついて来い』と言うジェスチャーをすると、黒田に背を向けて歩き出した。
その余裕が黒田の中の黒いモノに、更なる刺激を与えた。
男が立ち止まったのは小さな公園だった。
「よし、やるか。」
頭を掻きながら男は黒田に笑いかけた。
「おっと、その前に…さっきは殴って悪かったな、不意打ちしちまったから謝るよ」
思い出した様に男は頭を下げた。
「勝負の前に自己紹介だ、俺は白山魅導…お前は?」
最初のコメントを投稿しよう!