第1章 踏み込んだ世界篇

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この男の妙なスポーツマンシップに付き合う気は無い。   黒田は白山の言葉を無視して殴りかかった。   白山がいとも簡単にその拳を受け止める。   「せっかちだな、真剣勝負の礼儀だろ、自己紹介は…」   「何…?」   黒田は白山の言葉に初めて反応した。   真剣勝負?   「ただの喧嘩だ…」   空いていた手で白山の腕を弾いて拳を解放する。   この男は何を言っている?   「そうなのか?だってお前…さっきあのサラリーマン殺すつもりだっただろ?」   白山の発言に対して黒田は顔を上げた。   「生き死にの喧嘩は真剣勝負…だろ?」   黒田は無意識に震えていた。   怖い。   否。   面白い。   そういうのも悪くない。   武者震いだった。   「…黒田、黒田達人だ」                   夜空が綺麗だった。   黒田は白山が去った後、倒れたままで空を見続けていた。   白山は強かった。   信じられない程に。   何も出来ずに倒された。   死ぬと思った。   しかし、黒田にとどめは刺され無かった。
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