第1章 踏み込んだ世界篇

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「黒田…と言ったな、悔しかったらまたかかって来い、何時でも相手になるぜ」   そう言い残して白山は去った。   不思議と悔しさが無かった。   完敗だったから?   違う。   いつの間にか体の中の黒いモノがすっかり消えていた。   憑き物が落ちたから?   否、違う。   確かに実力差を思い知ったし、敗れたものの、すっきりしている自分がいるという事実も認められる。   楽しかった。   白山との喧嘩は楽しかった。   また戦いたい。   そう思った。   黒田はその日を境に自分よりも強い、と、黒田自身が認めた相手としか喧嘩をしなくなった。   何度かは因縁をつけられて喧嘩をしたが、徐々に黒田は不良達から注目される事が無くなっていった。   強い者と戦い、勝ったり負けたりという黒田から不敗という看板が無くなった為だった。   同時に本格的に格闘技を身につけるべく、様々なジムや道場の門を叩いた。   ボクシング、空手、柔道や合気道…様々な技を黒田は身につけていった。   黒田は何度も白山に挑んだが、一度も勝つ事は出来なかった。
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