2人が本棚に入れています
本棚に追加
「わーった!行ってやるよ!行ってやる!」
良介は観念したのか、頭をがしがしと乱雑に掻いてからパンフレットを吟味し始めた。
「でも、私は...」
自分の声が嫌いだから…、
俯いている私を見かねて、桐生が何かを差し出してきた。
「《声優は、魂を吹き込める役者。君の声で唯一無二のキャラクターが生まれる》…?」
「お前が嫌ってるその声を待ってるキャラクターだっているんだよ。お前が声優を目指すことによって、生まれるキャラクターだって、お前が声優を目指さなかったら生まれることは無い。お前がキャラクターを創るんだ。」
私が、キャラクターを創る。かぁ…。
「桐生のくせにかっけぇこと言ってんじゃねぇよ。」
「そうだねえー。桐生のくせにぃ。」
「るっせぇ!」
3人がギャーギャー騒ぎ始めるなか、私は考えを固めた。
「決めた!オーディション受ける!」
ばんっ、と机を叩き立ち上がる。
「きゅ、急にでっけぇ声だすな!」
「お、決めたか!」
「良かった良かった。」
「そうと決めたら、良介!今日受けに行こう!」
「は!?いきなり今日とか、あんのかよ!」
「これ!オーディション、今日だししかもちょうど学校終わった時間だよ。よくないこれでっ!」
「《声に恋しろ!恋声プロダクション》…。なんだこれ?聞いたことねぇし。なんか怪しくないか…?」
「いいじゃん。なんか面白そう!」
あーだこーだ言っている2人を見ながら、悠香と桐生は苦笑気味に笑っていた。
「ゆーゆー達がどんな声優になるか楽しみだね!」
「お、おう。(まずは受かるかどうかだけどな…)」
そう簡単なわけないからなぁ、何があるかわかんねぇから、受かるか、どうか…。
桐生の考えは、当たっていた。
有希と良介はどうやってそれを乗り越えるか―――
最初のコメントを投稿しよう!