中学1年生~夏~

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上田は笑顔でも無表情でもなく、真剣な表情で原稿を読んでいた。 それは初めてみた顔で……。 教室内では絶対に見せないような上田の表情に、一瞬全てを忘れた。 立ち尽くしていると、オレの存在に気づいたらしい上田が驚いた顔をした。 気づけば、帰りの放送は終わったようで音が止んでいた。 ブースから慌てて出てきた上田がオレに話し掛けた。 「やっ、山田!? 何でここにいるの?」 「え?あ……、ゆ、悠生いるかな?って」 適当な答えを言ったものの……。 オレにだって理由は分からない。 勝手に足が向いたんだ。 「ゆうき……? ゆうきって、美鈴ちゃん? 彼女は放送委員じゃないけど……」 「は……?美鈴って、誰……?」 微妙に話が噛み合ってない。 「え、同じクラスの……結城美鈴ちゃんじゃ……?」 同じクラス? ああっ!いたいた。 同じクラスの女子か! 名字が結城だから勘違いしてるんだ。 「その結城じゃなくて、本間悠生だよ」 「本間……って、ああ!」 やっと伝わったらしい。 「本間は、今日は担当日じゃないから帰ったんじゃない?」 「そっか」 ……って、知ってるけど。  
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