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上田は笑顔でも無表情でもなく、真剣な表情で原稿を読んでいた。
それは初めてみた顔で……。
教室内では絶対に見せないような上田の表情に、一瞬全てを忘れた。
立ち尽くしていると、オレの存在に気づいたらしい上田が驚いた顔をした。
気づけば、帰りの放送は終わったようで音が止んでいた。
ブースから慌てて出てきた上田がオレに話し掛けた。
「やっ、山田!?
何でここにいるの?」
「え?あ……、ゆ、悠生いるかな?って」
適当な答えを言ったものの……。
オレにだって理由は分からない。
勝手に足が向いたんだ。
「ゆうき……?
ゆうきって、美鈴ちゃん?
彼女は放送委員じゃないけど……」
「は……?美鈴って、誰……?」
微妙に話が噛み合ってない。
「え、同じクラスの……結城美鈴ちゃんじゃ……?」
同じクラス?
ああっ!いたいた。
同じクラスの女子か!
名字が結城だから勘違いしてるんだ。
「その結城じゃなくて、本間悠生だよ」
「本間……って、ああ!」
やっと伝わったらしい。
「本間は、今日は担当日じゃないから帰ったんじゃない?」
「そっか」
……って、知ってるけど。
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