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朝に話してるんだから、悠生がいないことは知ってる。
けれど他にとっさに言葉が出てこなかった。
「ちょっと上田さん、誰?彼氏?」
「「えっ!!?」」
ブースの外で待機していたらしい先輩女子に絡まれた。
予想外の質問に二人で大声を上げてしまった。
「ち、違います。そんなんじゃ……。
山田はクラスメートで……、本間を探しにきたみたいです。」
見ると、上田は真っ赤な顔をしていた。
「ふぅん?」
先輩女子がニヤニヤとオレを見た。
居たたまれなくなったオレは「居ないならいいです」と体を引いて、ドアから廊下に出た。
ドアを後ろ手に閉めてもたれ掛かると、ヒンヤリとした感触が背中に伝わってきた。
……オレ、本当に何してんだろう。
最近の自分は、自分でもよく分からない。
やっぱり、どこか悪いのかも知れない。
放送室での上田の真っ赤な顔を思い出すと、何故か自分の心臓までもが速くなり顔が熱くなるのを感じた。
しばらくしてから再び廊下を歩き出すと、向こう側から森が走ってきた。
「ヤマケン。早く飯食わないと部活に間に合わなくなるよ!」
「ああ……うん!」
後ろの放送室が気になりながらも、そのまま早足で教室へと戻った。
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