壱夜 ―沖田総司の場合―

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最近なかなか面白い人が屯所に来た。 名は壱夜蓮というらしい。 これが中々不思議な人で、皆さん間者だと思ってますが、私は全く違うと思うんですよね。 「総司!てめえまた俺の発句集を勝手に持っていきやがって!!」 「別に良いじゃないですかぁ!面白くて♪」 「俺は面白くねぇ!」 そんなことを言いながら土方さんから逃げていると、庭を掃除している壱夜さんと一君が目には入る。 「壱夜さん!斎藤さん!お早うございます!」 「お早うございます」 「お早う」 この二人は何だか雰囲気が似てるんですよね。特に無表情の所とか。 「またやってるのか総司」 斎藤さんは呆れた様な声を出す。 「失礼な!私は何もやってませんよ」 わざとらしく口を尖らせて言うと、壱夜さんが微かに笑った。 うん、やっぱり彼女は笑顔が似合うなぁ。 そんなことを思っていた時だった。 「沖田さん、後ろです」 彼女の声に後ろをふりむいてみると、まさに鬼の形相の鬼副長が。 「そぉうぅじぃ…?」 「あ、追いついちゃいました?はい、壱夜さん。」 そう言って持っていた発句集を渡す。 「?何ですかこれ?…豊玉発句集?」 壱夜さんがまじまじと其を見ていると、土方さんが慌てて様子で奪いかえそうと掴みかかった。 だが、それをひょいと避けて壱夜さんは私の方を見た。 「これを私にどうしろと?」 「良いことを聞いてくれました」 そう言って壱夜さんの後ろで殺気立っている土方さんを見ながら言った。 「鬼ごっこ、しましょう!」
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