鬼、土方歳三の受難

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「稽古の後に水を浴びていたら、井戸の近くにいたんですよ。可愛いでしょう?」 「うわ!仔猫じゃん!毛がふさふさ!触らせて!」 藤堂はこのような可愛いものに目がない。 永倉も興味があるのか、じっと猫を見ている。 猫は沖田の手から藤堂の手に渡された。 それをさも興味無さげに、原田は見てる。 「うわぁ―可愛い!可愛い過ぎる!」 藤堂はその猫の頭を撫でるが、猫の視線はある一点から離れない。 「そう言えば、壱夜は何処に行ったんだろうな」 猫に興味がない原田はそんなことを呟きながら、近くにあった鍋の中のおかずを摘まみ、口の中に放り込もうとした。 その時だ。 にゃ――! 「え、ちょっと、お前!」 「は?」 藤堂の声が気になり、そちらを向いた原田が見たのは… 猫が自分に向かって跳躍しているところだった。 「え?……うわっ!」 後ずさった原田の身体が鍋に当たり、 がっしゃーん! 鍋が引っくり返る。 「げ!」 にゃ――! ここぞとばかりに猫はその鍋に入っていたおかず――小魚の佃煮をくわえ、勝手場から逃げ出した。 「お、おい!待てって!」 それを藤堂が追いかける。 「うわ―――、こりゃ不味いな」 「ですね―」 永倉は焦っているが、沖田は他人事の様に笑っていた。 そこに、何処かへ行っていた壱夜と井上源三郎が勝手場に入ってくる。 「どうしたんです、大きな音が聞こえましたけど…………って、何ですかこの状況!」 気付いた壱夜は珍しくその顔に焦りを浮かべている。 一方の井上は… 「原田君!何してくれたんだい!鍋をひっくり返して!」 怒っていた。
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