1512人が本棚に入れています
本棚に追加
/549ページ
「今日、お前が出ている時に医者が来てな」
蛍が飛び疲れて休憩するかのように、俺の掌に乗った。
淡い光は、今にも消えてしまいそうだ。
「傷もだいぶ癒えてきたし、あとは目が覚めるのを待つだけだ、と」
「…!本当かっ…!?」
「ああ。……だが、いつ目が覚めるのかは、わからない。明日かもしれないし、何年も後かもしれない」
桂はそう言って星空を仰ぐ。
月は木々の葉に隠れて見えないが。
「稔磨次第だ」
―――ぽわぁ、っと。
蛍はまた飛び立った。
「…稔磨なら、大丈夫だ」
根拠は無いが、そう確信した。
稔磨なら大丈夫。きっと、大丈夫。
「そうだな」
桂も俺と同じ思いなんだろう。
大きく、頷いた。
「稔磨が目を覚ましたら………その時は、三人で、輝生を迎えに行こう」
「………」
「それまでは、見守っていよう」
遠くで笑う輝生を見つめた。
あいつ等のもとで、楽しそうに笑っているその姿。
最初のコメントを投稿しよう!