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屋上に呼び出された。
本来であれば今の時間、俺は下の教室で授業を受けているはずだ。
しかし、実際のところ、俺は校舎の最上階にある立ち入り禁止と書かれた看板を跨いだ先で、ため息をついていた。
俺を呼び出した彼女。
彼女を二文字で例えるならば、“異常”に限る。
そんな皮肉の言葉を心の中で浮かべても、彼女にとって全く意味はないのだが。
ふと目の前の光景を見て、屋上の扉を躊躇いもせず蹴破る彼女の姿が、脳裏を過った。
開放感溢れる、見事なビフォーアフター。
全くもって、気分が滅入る。
しかし、それとは対照的に、青々とした空を背に、この壊れた扉の向こうの屋上に立つ彼女は、とても壮大なものに見えた。
「来たわね、ハロー」
「来てやったぞ」
屋上に、二人の影。
こうして同じように立ってみると、フェンスで囲まれていても、広々としているものだ。
「それで、授業を放ってまで何のために呼ばれたんだ?」
「そんなの決まってるじゃない」
優しくもなく、柔らかくもなく、小さくクスッと笑った。
俺はこの笑顔が嫌いだった。
「私の暇潰しに付き合いなさい」
彼女【萱野 志紀(かやの しき)】なら、そんなことだろうと思った。
お前も馬鹿だと思う俺もまた、大概な馬鹿なのだ。
ため息を通り越して、もはやむせた。
なんて、鼻で笑ってしまう。
所詮、この俺【国栖野 直衛(くすの なおえ)】も退屈で仕方がないのだ。
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