Ⅰ.デタラメ人工世界論

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「この世界は、人間によって創造されたものである」 とある日の昼休み。 何かがまた、今まさに目の前で始まろうとしていた。 教授やら専門家やらが言うより、胡散臭さが倍増しになって、俺の耳にまとわりつく。 「この世界には、いろんなもので溢れかえっている。でも、それはそのものが存在する前に、存在させるものがいたからこそ、存在し得るものなのよ」 何を言ってるのか、まともに授業を受けてなかった俺には検討もつかない。 かといって、そうでなければ理解でき得るものなのかは知らないが。 とりあえず、“存在”という言葉が三回出てきたことだけはわかった。 「いい具合にヒートアップしてきたところで水を注させてもらうが、何の話をしてるんだ?」 「何を言ってるの、日常会話よ」 「誰がついていけるんだ!その話題!お前の友達はどっかの学者か!」 「私の友達は、クズよ」 「俺の名前は“くすの”だ」 「だから、そう言ったじゃない?」 「いや、お前今クズって」 「あら、クズなの?」 「図ったな!お前は諸葛孔明か!」 「人聞き悪いわね」 「偉人に謝れ!」 何とも見事に、テンポよくボケをかませるものだ。 尊敬に値するなどと賛辞の言葉をかけてやる気も、超越さえぶっちぎって、一切起きない。 むしろ、それにツッコミを入れた俺を褒めてくれ。 受賞なんて大したものじゃなくても、こいつから五十円はもらえそうだ。 閑話休題。 「話を戻すが、さっきのはどういう意味なんだ?何の話だ?」 「人工世界論というものよ」 「そんなものを俺に諭してどうする?それこそ学者にするような話な気がするが」 「そうね。でも、私の考えだから、学者に本物の話を持ち出されでもしたら、面倒臭そうじゃない」 「デタラメかよ!」 なるほど。 こうして、怪しい宗教が広まっていくのか。 大して知りたくもなかった社会の知識を、一つ身につけたような気がしたが、礼を言ってやる義理は皆無だろう。 どうでもいい上、おそらく今日中に忘れるからな。
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