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「それにしても音弥ん家って本当に仲いいよな。」
幸太郎がまじまじと呟く。
「確かに。クリスマスとか誕生日とか必ず家族で過ごすよな。」
「普通じゃないか?」
今まで自分が当たり前だと思って過ごしていたことを意外がられて、音弥は逆にビックリした。
「普通じゃねぇよ。俺、家族に誕生日祝ってもらったの小学生までだぜ?クリスマスプレゼントも小学生まで。」
「俺も。中学からは友達とかと飯食いに行ってた。」
幸太郎たちの話を聞いていると、うちの親は過保護なんだなぁと音弥は思う。まぁ、過保護は愛情の裏返しと思えばそれは幸せなことだと思うが…。
「じゃあ、プレゼントとか買ったのか?」
「あぁ。一応な。」
音弥は袋を取り出した。
「なんだこれ?」
「アフタヌーンティーセット。うち専業主婦だからな。一日中うちにいるんだから暇な時間ぐらいあるだろ。」
「女子みたいだなお前。まぁ、美桜さんならこれも似合うだろうな。うちなんかじゃ豚に真珠だ。」
「本当に美桜さんキレイだもんな。羨ましいぜ。」
「人の母親を名前で呼ぶな。普通のおばさんじゃねぇかよ。」
みな、陽子と同じようなことを言う。自分の母はそんなに特別な存在なんだろうか?
「下手したら20代みたいな顔してんじゃねえか。あれのどこがおばさんだ!?」
「ただの若作りだろ?」
そう言いながら音弥は美桜の顔を思い浮かべる。20代は言い過ぎだが確かに若くは見える。多分髪型とか服とかで誤魔化してるだけだと思うが…。
「はい、席つけー。授業はとっくに始まってるぞー。」
地理の青山が教室に入ってきた。またでっかい地図持ってんなぁ…そう思いながら青山を見ていると目があった。
「あ、涼代。次の休み時間職員室に来い。」
「おいおい、音弥何やらかしたんだ?」
音弥の身に覚えはなかった。素行も授業態度もいい方だ。
「心配しなくても生活指導じゃないから安心しろ。」
じゃあ、一体なんだというのだ。
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