1-2.幸せの壊れる音

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その時間は刻一刻と迫っていた。 「音弥。早く起きなさ…」 美桜が毎朝のように音弥を起こしに行くと既にベッドは空だった。 リビングに行くと朝食の準備を始めている音弥がいた。 「おはよう。母さん。昨日はよく眠れた?」 「もちろんよ。それよりなによ、音弥。あなた、自分で起きられるんじゃない。」 「これから独り暮らしになるんだからな。自分で起きられないでどうするよ。」 そう言いながら音弥はもくもくとテーブルセットを始めた。 「お、音弥。今日は早いな。」 清弥が新聞片手に2階から降りてきた。 「おはよう父さん。」 「おはよう。今日からお前も鞍馬田生か。実感ないな。」 「1番実感ないの俺だからね。昨日まで平凡なの公立高校の1生徒だったのに。」 「それもそうだな。」 はははと笑って清弥は音弥の淹れたコーヒーをすする。 「お、美味いな。」 「毎日飲んでるからな。」 テーブルについて一息つく。 今日は学校へは行かない。昨日が最後の藍川だったなんて信じられない。 (もっと幸太郎とかと馬鹿やっときゃよかったな。) 鞍馬田に行ったらあんな風にふざけている余裕はないだろう。 ピンポーン。 気づいたらいつもの時間。 あいつが…陽子がまた迎えに来た
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