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「ホントにおばさんって完璧だよね。」
登校中、陽子はうっとりと呟く。
「そうか?」
音弥は不思議そうに首を傾けた。音弥は美桜のことを特別とか、完璧とか思ったことは1度もない。どこにでもいる普通の専業主婦だと思っている。
「なに言ってんの?一流大出てんのにそれを鼻にかける感じもないし美人で優しくて料理も上手。あんた、これを当たり前とか思ってたらバチ当たるわよ。」
そういえば陽子は小さいときからおばさんみたいになりたいと言っていた。自分の母はそんなに尊敬に値する人間なんだろうか?
「あんただって、おばさんに似てキレイな顔してるんだから、ちょっと身だしなみ気を付ければ凄いカッコいいのに…。」
陽子はボソボソっと呟いた。
「ん?なんか言ったか?」
「えっ?何にも?」
この呑気で鈍感な幼馴染みのせいで陽子はいつの間にか自分の想いを真顔で隠すのが上手くなった。
「おっはよー、音弥。今日も夫婦で登校とは妬かせるねー。」
音弥と同じクラスでムードメーカーの石原幸太郎が自転車で追い抜きながら2人を茶化していく。
「バカヤロー。誰が夫婦だ。何度も言わせんな。」
それに慣れたのか音弥はトーンを変えずに否定する。
それを陽子が複雑な想いで見送るころ、音弥や陽子が通う県立藍川高校が見えてくる。
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