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「初佳、洗濯もん畳むの手伝って」
沢山の洗濯物を抱えた姉が部屋に入ってきた。
雨は窓を叩き、その存在を、どんぐり飴の思い出をアタシの中から出さないようにする。
アタシの中のどんぐり飴は、雨にうたれてべとべとに溶け始めている。
「私がいるのはもうちょっとなんやから、居らんようになったらしっかり家の事やってや?」
「わかってるって…」
この六月、姉は結婚する。
今年の祭が終わったら、姉は隆文さんと一緒に東京へ行く。
アタシは一人取り残される感じがして、とろとろに溶けたどんぐり飴と一緒に遠くへ歩いていく二人を見つめている。
もうアタシに新しいどんぐり飴をくれる人はいない。
空は暗く、雨はざーざーと音を立ててアタシの中にも降る。
でも、ただそれだけ。
それだけ。
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