世界を歩く箱

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 驚いたのは箱だった。  箱の中は恐怖や混乱、寂しさ、不安が溢れんばかりに広がっていくのを感じた。  箱は慌てて赤子を出そうとした、しかし、気付いたことがある。  この感情は消えない。  後から後から溢れ出て尽きることのない感情の波、虚無感も隅に追いやられる。  箱は過去に入れられたオルゴールを赤子の横に置き音楽を鳴らす、赤子は暫くぐずったが、箱の中が居心地良いのかやがて眠ってしまった。  箱は思った。  この子を育ててみよう。  そうすれば箱の中はいつもいろんな感情に満ち溢れ、虚無に支配されることもなくなる。  箱は今まで入れられてきたもの全てを使い、赤子を育てる決意をした。  赤子の眠る安心の感情はとても心地良い、このまま安らかに育ってくれと箱は思った。 それから、箱を持つ者は何故か食べ物や衣類を箱に入れたくなるようになった。  その箱が今何処にあるのかは分からない。  今でも箱は子供を育てているという噂。 ―終―
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