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ここに、いろんなモノが詰まった箱がある。
この箱は今までいろんな国を旅してきた。
箱を持つ者は必ず、この箱にもっとも思い入れのある物を詰めて次の人に受け継ぐ。
次の持ち手は誰でも構わない。
血縁者でも、近くを通りかかった人でも、箱は必ず誰かの手に委ねられ、いろんな土地を渡り歩いた。
そうして数百年は世界を渡り歩いている。
箱は探していた、虚無を埋める物を。
今までどんな物を入れられても、虚無感は拭えなかった。
金、宝石、絵画、衣服、鏡、おもちゃ、切手、書物、植物、ワイン、車…。
大きさなど関係ない、持ち主が入れたいと思う物なら何でも入れてきた。
でも、それらはすぐに色褪せて、残るのは大きな虚無感。
箱は物を入れる度に増え重なる虚無感に押しつぶされる寸前だった。
また、新たな持ち主の手に渡る。
無駄だろうと、期待するのは無駄なことと思いつつも、箱は新たな持ち主を受け入れた。
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