幻想少女恋愛譚

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 それは、みんなにとってはいつものなんてことのない日でした。  でも、私にとっては劇的な変化の起こった一日でした。  私は香坂恵美、白銀女学院中等部二年生。  クラブには所属してはおらず、もっぱら図書館で一日を過ごすような、大人しい生徒でした。  えぇ、図書館の本は殆ど読み尽くしています。  特に幻想小説は何度も読み返しました。  図書館からは、陸上部が練習する光景がよく見られました。  そこに、彼女はいたんです。  兎月美咲、私と同じクラスの彼女は、私とは正反対の人でした。  彼女は陸上部の短距離走者、いつも一位で大会にも出場するほどの実力者です。  彼女の周りにはいつも人がいました。  彼女を慕い、憧れる後輩や同級生、彼女はその艶やかに流れる腰まで伸ばした髪を風に舞わせ、しなやかな四肢を太陽光の下に堂々と晒していました。  彼女の瞳はいつも真っ直ぐに、未来を、光を、希望を映していました。  私は見ているだけ。  生きる世界が違っていました。
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