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三十分ほどだろうか、そろそろ帰らなきゃと告げ自転車に乗り込む。
女はボクの袖を掴み、メールアドレスを教えてくれとすがりついた。
やんわりと断るが、まったく諦めてくれる様子がない。
横を通り過ぎるおばあちゃんが心配そうに見てくる目線がとても痛い。
とうとう女がボクの腰から携帯を取り上げようとしたとき、青に変わった信号を警官が一人走ってきて止めてくれた。
どうやら先程の目線の痛かったおばあちゃんが通報してくれたようだ。
ボクの嫌がる様子を見て、女の行動が異常なのだと察してくれたらしい。
警官は女とボクの間に入り…女は警官よりも背が高いようだ…ボクに早く帰るようにと言って逃がしてくれた。
女の、踵を踏んでいるのであろうパコパコという靴が跳ね上がる足音が次第に早くなり追いかけてくる。
それでも自転車には追いつくことはできないようで、どんどん音は遠ざかり、川に架かる小さな橋を渡った頃には聞こえなくなっていた。
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