鞠つき

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 その日、半袖じゃそろそろ寒いなと感じた頃。  ボクは家で宿題をしようとランドセルを開けたんだ。  今日の宿題は面倒な漢字の練習、算数ドリル、ミシンの部品の名前を覚えること。  とりあえず一番面倒な漢字の練習をしようと思ってノートを探した。  ない、ないんだ。  どうやら学校に置いてきてしまったらしい。  今は夕方六時、まだ校門は開いてるかもしれない。  ボクは漢字ノートを取りに行くと母さんに言ってから自転車で出かけた。  辺りはもう薄暗くて、めったにこんな時間に外にいないボクは、なんだか少し怖い気分で自転車を走らせていた。  すれ違う人は多くて、車だってよく通る。  何も怖がる要素なんてないはずなのに…。  このとき、諦めて帰っていれば良かったんだ。  ボクはこの後、一生もののトラウマを背負うことになる。
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