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それなのに、玄関にメイド服を着ていて銀髪に褐色の肌の人。――胸のわずかなふくらみと、腰や身体の丸みから察するにおそらくは女性。それが右手に青いバインダーを抱えて立っていた。
髪はポニーテールで、背中にわずかに届いているようだ。背は160センチくらいかな。
良く見たら瞳の色が赤い。真っ赤ではなく、くすんだ赤色。色はくすんでいるけれど、瞳自体は好奇心なのか、やる気から来ているのか輝いている。
ありえない状況を目の前に、ものすごい観察力だ。しかし、その観察力とは逆に行動は全くなく、ピクリとも動いていない。
どうやってここにはいったのか。
肌の色と髪の色が違うから、外国の人に違いない。言葉は通じるのか?
いやまて、何をこの人が存在していることを前提に考えているんだ? さっきの妄想の続きなのかもしれない。
「はじめまして、魔王候補の細川生人様ですね。私はフィルダーと申します」
深くお辞儀をする。つられて俺は頭を軽く下げた。
声は高いな。それに日本語だ。しっかり勉強しているのか発音に抑揚があまりない。
そうじゃなくて! 魔王候補?
余計訳が分からなくなってきた。
「かなり混乱しているようですね。説明いたしますので、落ち着いて聞いてください」
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