誕生日まで35日 その1

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少し息の荒い彼女の声は、必死に振り絞ったかのように上ずっていた。 目を開けると、ギュッと目を閉じた彼女がいる。ホント、あと数センチってところだったのに残念。でも、まだチャンスはあるはずだ。 「なにかな?」 今の俺の心情を悟られないように、きわめて冷静に。しかし、期待をこめて笑顔でたずねた。 「ラザニア……なんだけれどね、そ、その、あのね……」 そこまで言うと口ごもってしまった。 ラザニアは俺が好きな料理だ。でも、ホワイトソースにミートソース、ラザニアをゆでる。さらにオーブンで焼くといったように過程が多く、時間がかかる。だから、特別な日にしか作らない。 間違いなく何もないはずなんだが、少し彼女から離れて何かあったっけ? と思い返してみる。 「そ、そのね、きょきょきょ今日は……ごごごご飯に……」 少し離れたときに出てくる言葉は、噛み噛み。手はあたふたと何かを訴えるかのようにせわしなく動いている。 「お、落ち着いて。深呼吸、深呼吸」 彼女の言動に噴出しそうになるのをこらえ、必死にあたふたする彼女の肩に手をポンと置く。 「う、うん。すー……はー…すー、はー」
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