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かっこよさを重視したであろう声で、
「ボンバーを一本」
非常にかっこ悪いセリフを吐き出した。
俺は物理的に口の中の酒を吐き出した。
正確には、吹き出した。
だが幸いにも、口に含んでいた量は少量でありかつ吹き出すインパクトの瞬間に俺は顔を机の方へ向けたので、被害は最小限に抑えられた。
恐らく、男は"バーボン"と言いたかったのだろう。
バーボンとは、ライ麦やトウモロコシを主原料とするウィスキーであって、決して"爆撃機"や"爆撃手"というような意味を持つ酒ではないはずだ。
マスターを見ると、先ほどまでの爽やかな微笑から一転、その道のプロですら容易に下せるのではないかというほどのポーカーフェイスで、男がいうところの"ボンバー"とそれを入れるためのグラスを取り出していた。
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