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男はもう一度、今度は力強くグラスを押した。
女性の下へ、鮮やかな琥珀色の液体を届ける為に。
バシャ
グラスが倒れた。
グラスに入れられた琥珀は、その形を失い、あめ色のカウンターの上で広がった。
さらに、そこからボタボタと彼の鞄にピンポイントで琥珀色の液体は落ちた。
高級そうな白い革の鞄は、少しずつ琥珀色に染められていく。
吹いた。
俺は耐え切れずに日本酒を思い切り吹き出した。かろうじて男に吹きかけることだけは避ける為に、俺は自分のズボンが犠牲になるのも厭わず《いとわず》に、全力で下を向いた。
「ぶはっ!!
はっはっはっはっは!!
く、苦しい!お、お、おなかが!腹筋がぁぁ!!」
という可愛らしい声が、スタッフオンリーの扉の向こうから聞こえてくる。
きっと、女性店員はずっと様子をうかがっていたのだろう。
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