17人が本棚に入れています
本棚に追加
すぐに階段を下りて来る音がした。
「恭介、この子が私の娘でお前と同い年の紅葉だ」
ほら、挨拶しろ、と葵に言われて恭介の前に出される紅葉ちゃん。
「て、天丞 紅葉【てんじょう もみじ】です。 よ、よろしくね」
私も恭介に挨拶しなさいと言った。
(挨拶はギルドに来る途中に教えたから、たぶん上手くできる……はず)
「……は、花宮……恭介。 よ、よろしく」
――――今、恭介は花宮って言ってくれた?
「ねぇ、葵。 おトイレ借りて……いいかな?」
「……あぁ行ってこい」
葵は私の事を察してくれたんだろう、答えてからは私から目を逸らしてくれた。
恭介が『花宮』と言ってくれた。
私が挨拶を教えたときは『如月』と言わせていた。
恭介はまだ小さく親との決別を明確にするか迷ったから。
なのに恭介は『花宮』と言ってくれた、その事実に私はボロボロと涙を零した。
最初のコメントを投稿しよう!