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もう、嫌なんだ。切ないのは。
慶ちゃんはそう言って泣いた。俺を抱き締めて、耳元でうっすらと吐息を漏らして。止めちゃえば良いのに。追い掛ける恋なんて不毛なだけだよ。そう、口から吐き出せたらどんなに楽か。でも言葉にしたところで、それでも好きだ。なんて言われたら今度は俺が泣いてしまいそうだから、止めた。慶ちゃんの前では格好付けて居たいんだよね。
顔を起こして、くしゃくしゃと彼の頭を撫でた。目を細めた慶ちゃんは猫みたい。可愛い。もっと撫でて、いっそ唇を重ねて、恋に溺死なんて原因で君を殺せたら、こんなに胸が痛くなることも無いのかな。
俺も嫌だよ、切ないのは。
追い掛ける恋なんて、不毛なだけだ。君を追い掛けている俺が一番良く知ってる。だから君を抱き締めて、抱き締めて。耳元でそう囁いて、耳朶にキスをした。
終わり。
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