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ソフトクリームを、慶ちゃんに買ってあげた。慶ちゃんは持つのが面倒臭い!って、俺に持たせる。…そういうとこ、可愛いんだけどね。
それにしても、暑い。ああ、もう溶けてきた。慶ちゃんは俺に背中を向けて空を見上げてる。あの雲はドーナツみたいだね、なんて呑気に俺には目もくれずに笑う。…ねえ、どうすんの、これ。
心の訴えが聞こえたのか、慶ちゃんが不意に振り返った。溶けて俺の手にまで流れるソフトクリームを見つめて、その手首を掴み引き寄せ、俺の親指の付け根を舐めた。
「…え、」
驚いた、というか。身動きが取れなかった。ただ、その光景を眺めることしか出来ない。赤い舌先が白いクリームを掬い、飲み込まれていく。慶ちゃんの体温が、親指から脳までいっぱいいっぱい伝わる。
抱き締めたい。慶ちゃんの体温に脳が反応する。キスしたい。
「あとはシゲが食べていいよ。」
行動に移る寸前に慶ちゃんの声でぴたりと脳は命令をやめた。もう、聞こえないフリして抱き締めちゃえば良かったんだろうけど、慶ちゃんが笑顔で手を差し出すから、アイスを持ってない方の手で慶ちゃんと手を繋いで、一口も食べられていないソフトクリームを舐めた。
終わり。
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