プロローグ

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ある森にひっそりと作られた木製の家と、家の横にお墓があった。 「なぁ、音音【ねおん】。俺、子音【しおん】とパートナー組むことにしたよ」 黒いコートを着た少年が、お墓に手を置きながら言った。 その時風が吹き、木々が揺れる心地いい音がした。 「俺は音音に恩返しできなかった代わりと言ってはなんだが、子音は守ろうと思ってる。でも……本当にどうにもならないとき以外は“音”の能力は使わないでおこうと考えている」 「使ってしまうと蟠り【わだかまり】ができると思うんだ。だから…………時間が経てば全部話そうと思っている」 いつの間にか風は止み、木々の揺れる音も消えていた。 「いつか……ここに子音と来れるようにするよ。…………母さん」 少年はそれを最後に森を去ろうとした。 次は強い風が吹き、木々がまた揺れた。 その木々の音を聞くと、少年はお墓に笑顔を向けてから帰った。 あ・り・が・と・う が・ん・ば・れ 今は亡き人からのメッセージはそんな音を奏でていた。
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