3人が本棚に入れています
本棚に追加
声は廃墟から聞こえてくるみたいだ。
隣にそびえたつ、すたれた建物。
外装は剥がれコンクリートがむき出しになったビル。
さびれたフェンスにもたれかかり、少女がつぶやく。
「あなたは雨が好き?」
長髪を揺らし彼女は僕を見ていた。
鮮やかで怖いくらい綺麗な赤い目をしていたことを覚えている。
次第に雨はひどくなり、雨粒は僕とこの街を赤く濡らしていく。
「あなたは雨が好き?」
……僕は…。
いつの間にかそばにいる彼女。僕の表情から答えを待ちわびる。
赤い瞳はまるで心の底に覗き込まれているかのように不快だった。
……僕は…。
「ドスッ」
鈍い音が響いた。
喉にくる激痛。
喉元に突き刺された黒い刀。
ドロドロと流れる血を指で触る。
それは温かくて、自分の中のモノだと確信する事ができた。
僕は雨が…嫌いだ…。
街灯の明かりはだんだんと消える。
そばに置かれた死体を隠すかのように。
また新たな同士を密かに迎えるように。
最初のコメントを投稿しよう!