3人が本棚に入れています
本棚に追加
「ピンポーン。ピンポーン。」
早朝からなるチャイムはテレビの音をかき消し、不気味なまでに一定のリズムで不安をかき立てていく。
「はい」
最小限の口数で玄関のドアを開けた。
「初めまして。近くに引っ越してきた桐谷(きりや)と申します」
ドアの先には見覚えのある少女の姿があった。
黒い艶やかな長髪に白い肌、瞳は黒く淀みのない。
今さっき自分の夢に見た少女とまるっきり同じ容姿だった。
違うのは瞳の色だけ。赤い、燃えるような瞳は夢にみていた空想なのかもしれない。
「どうも。よろしくお願いします」
夢に見た少女が現実に存在していたことに不気味さと不安が増していく。
「それにしてもこんな早い時間にたった今引っ越して来たのですか?」
早朝の空には小雨が降り続いている。
「はい。早朝に失礼しますが、ちょうど部屋が空いたと言われまして今日から暮らすことになりました」
彼女は淡々と答える。黒く瞳は俺に向けられているのだが別の何かに問いかけているようだった。
「そうなんだ。こちらこそなんか気になって質問してすいません」
「いえいえ。私こそ早い時間にきてしまい失礼しました」
軽くおじぎをして彼女は玄関のドアを閉めた。
ふと気になったことがある。
このアパートで部屋が空いていたのか…。
たしか上の階はあるみたいだかこの階は満室だったはずだ。
誰かいなくなったのか…まて…あのニュースでみた部屋って…。
気付いたら走り出していた。
最初のコメントを投稿しよう!