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ファントムは盛大な舌打ちをかました。 「--ッの馬鹿!」 (この糞忙しい時に!!!) 帆を畳むロープを勢いよく引きながら、ファントムはこの船の中で1番頼りになる人を探していた。 「キャプテン!」 張り上げたテノールの声が、その人のもとに届く。 あさぎ色の髪をした初老の男が、上を見上げた。 「どうした!」 「馬鹿が、海に落ちた!!」 「なんだと?!…ファム!そこが終わったらシトリスとコーラルのところにまわれ。ジャスパー!海流はどっちだ?!」 ジャスパーと呼ばれた、船1番の大男は、その手に伝わる感覚と体内に潜む方位磁針を頼りに船の向かう先を割り当てる。 「南と…いや、南南東ぉぉっっ!!!」 褐色の肌に、ニカリと笑みを浮かべジャスパーは答えた。 南南東。 船首はまっすぐ、その小島を差している。つまり、落ちたカーネリアが流れ着く先は あの島である可能性が、高かった。 「がはははっ!あいつはとことん運がいい!!」 この危機的状況の中に似合わない、楽天的な笑い声が甲板に響いた。 船長であるその男は、にっとした笑顔をクルー達に向ける。 その笑顔は、限りなく無邪気だった。 「お前ら!リアのことは気にするな。久しぶりの大嵐を楽しもうじゃねぇか!!!」 「「「「おお----っっ!!!」」」 波が風が、船を強く揺さぶる。だが、その上にいる船乗り達の表情は明るく、声はとても力強かった。
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