1人が本棚に入れています
本棚に追加
「な~にやってるの?」
その子が話しかけてきたのは、放課後のこと。
僕は学校の近くにある山で、昼寝をしているところだった。
「なにって……昼寝だけど」
この頃の僕は人見知りで、人と話すことが得意ではなかった。
だから、彼女と話すのも、最初は嫌だった。
「ハハッ。昼寝だってことは見ればわかるよ」
何故か笑っている。
陽気な人なのかな、と僕は思った。
「それにしてもさ、こーんな急斜面で昼寝しなくてもよくない?」
彼女はそう言って、僕の隣に腰かけた。
まぁ、昼寝だけなら山には来ないけどさ。
と、思ったけど話す気になれず、代わりにこう言った。
「竹……。見に来た」
しかし、彼女には説明不足だったらしく、彼女は首を傾げていた。
僕は何も言わず、自分が寄り掛かっている竹を指差す。
「へぇ、こんなところに竹があったんだ~」
と、彼女は驚いた様子を見せた。
ちょっと後ろ見れば気づくだろ、と思いつつ、僕は彼女の天然気味さに興味を持って、尋ねてみた。
「名前は?」
すると、彼女はなぜかあわてた様子になり、
「二魅堂癒沙(にかいどうゆさ)です」
何故か敬語で名乗り、
「そっちは?」と、返してきた。
この時の彼女の言葉は、今までに無いほど、不器用だった気がする。
「伊吹迅(いぶきじん)」
「イブキ? 寝ているときに鳴るヤツ?」
「それはイビキ」
最初のコメントを投稿しよう!