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本棚に追加夜の姿へと変貌しつつある繁華街。
そこに見るからに帰り道を急ぐ女子大生が一人つかつかと歩いていた。
一見するとどこにでもいそうな彼女、名を松本茜と言う。
大学に行ったはいいもののその日の唯一の講義は休講で繁華街でショッピングを楽しんでいたらすっかり日も暮れていたというわけだ。
自然と茜の歩みも早くなる。
だが、そんな茜を目敏く視界に捉え、近付いてくる男がいた。
茜の華やかではなく、遊び慣れていない感じが引っかけるのにちょうどいいと踏んだのだろうか。
ホストと思しきチャラチャラとした二十代前半のその男は背後から何気なく茜の肩に手を置いた。
「ねぇねぇ、ちょっと店寄ってかなーい?」
「うぉわぁぁぁ!」
「……!?」
茜よりも彼女の大声に男の方が驚いた……
と、同時に。
ドカッ!! ゲシッ!!
男の顔面に教科書でパンパンになった鞄が、蹴り出した足が偶然鳩尾にめり込んだ。
男はアスファルト舗装された道路に伏せった。
が、茜に悪気はない。
慌ててしゃがみこんだ。
「わぁぁぁっ、すみません、すみません! しっかりしてください!」
男の意識が戻る気配はない。
そんな中、一部始終を見ていたある男の高らかな笑い声が辺りに響いた。
「あははっ、君、盛大にやったねぇ!」
声の主は通りに面した建物の二階の手摺りに腕を預けて茜の方を見下ろしていた。
彼こそが吉田稔麿。
これが茜と稔麿の出逢いだった。

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