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顔を上げられずにいると、視界には山下くんの手があった。
ふっくらとしてまるでクリームパンのような、でも確実に私とは違う男のコの、大きい手。
山下くんは一体どういうつもりで、私に触れたのかな?
まだ熱の残る顔を押さえながら、ちろっと見ると。
山下くんではなく、隣の城座くんと目が合ってしまった。
ニヤリと口の端が上がっている。
「そういえば、山下、おまえさ。好きなタイプってどんな感じ?」
「え?急だなー。
タイプがどうこうって、俺みたいなブサメンが言える立場じゃなくない?
女子の皆さまに失礼だし。」
おどけて言う山下くん。
あぁ、自分のことそんな風に言わないで!
「そんなことないよ!
山下くんす、素敵だもん!好きなタイプ、私も知りたい…!!」
わ、今の発言、ちょっと攻めすぎたかな!?
「はは、泉さん、優しいなぁ…。
タイプって、何だろなぁ。
中学の時に付き合ってた彼女は、天然な感じだったけど。」
「天然…」
どうしよう、当てはまらない。
それって、私はもう圏外なのかな!?
「泉さんは?」
「この人、イケメンじゃないほうが好きなんだって。」
「え、なに、どゆこと?」
「あと、優しく諭してくれる人がいいらしいよ。」
「ちょっと、城座くん…!」
協力的なのはありがたいけど、勝手に言わないで…!
「へぇ~。
諭すとかはわからないけど、イケメンじゃないほうが好きなんて、奇特だね!
そんな女子もいるなんて希望がもてるな~。
世のブサメンを代表してお礼を言うね!」
「そんな、ブサメンだなんて…。」
山下くんはかっこいいのに。
でも、これ以上の勇気をもってそれを伝えることは、私にはできなかった。
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