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------------------ 「はい、これ夏休みの予定表。 お休みに入るまでにパターンを起こすとこまでできたらベストだけど、終わらなかったら各自持ち帰ってね。 生地選びは、夏休み初日にみんなで行くから、予定を空けておくように。」 手芸部の3年生の部長から配られる予定表は、ほとんどが自主制作という文字で埋まってる。 3年生は受験勉強もあるので、基本的に後輩の指導や、メイン以外の衣裳を担当していた。 数は多いが、過去に制作され部室に残されている衣裳をアレンジしなおしてできるような簡単なものだった。 今年の演劇部の演目は、ファンタジー映画の「シザーハンズ」が題材で、私は、その中のヒロインのキム役の衣裳を担当することになっている。 そして主人公のエドワードは、宮ちゃんが担当だ。 デザインするときには張り切って色々描いたけど、これからが大変だなぁ… デザイン画と配られた予定表を交互に見ながら、宮ちゃんと教室に向かって廊下をてくてく歩いていた。 「いよいよこれから忙しくなるねぇ。ナオちゃんは順調?」 「ううん、全然だよ。 休みまでにパターンまで終わらないと思う。 宮ちゃんはどんな感じ?」 「私もだよ。 終わるか自信ないなぁ…」 宮ちゃんは困るとアヒル口になる。 小柄でリスのような宮ちゃんのその様子がとても可愛くて、思わず萌えっとなっていると、 宮ちゃんの携帯がブブブと振動した。 「あ、ダイ先輩だ!」 嬉しそうに頬を染め、 「今、図書館にいるみたい。 私、ちょっと寄って帰るね。」 と言った。 「うん、またね!」 嬉しそうに、てててと小走りの宮ちゃんをほほえましく見送る。 ダイ先輩が本当に好きなんだなぁ… 宮ちゃんの彼氏のダイ先輩は、一見派手で軽い印象があるので付き合うことを聞いたときは驚きもしたが、こういう宮ちゃんの恋する一面を見ると、幸せなんだなと思った。
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