56人が本棚に入れています
本棚に追加
夕日を受けながら、校庭ではまだ部活が行われていた。
校舎を出ると、目はテニスコートについ向かってしまう。
あ。
いた。
テニスコートに程近いこの場所からは、山下くんの姿がはっきりと見える。
どうやら部員同士で練習試合をしているようで、山下くんは相手とラリーをしているようで、汗がキラキラと光っていた。
瞬間、スパンと相手に強烈な一打をお見舞いされ、審判のゲームセットの声と共にその場にバタっと倒れこんだ。
「くっそー!くやしー!また負けた~!」
笑顔で大げさに悔しがるそぶりに、周囲から笑いが漏れる。
「おまえ、ほんとツメが甘いよなー。」
色々な人に突っ込まれる姿は、山下くんが皆から愛されている証拠だ。
その輪の中に城座くんもいて、無邪気に小突き合っていた。
私がその場で、山下くんに気づけ気づけと念を送っていると。
城座くんがこちらに気づいた。
そして、横にいる山下くんに耳打ちし、こちらを指差した。
あ!ど、どうしよう…!
心臓がドキンと跳ねると
山下くんはそのままの笑顔でぶんぶんと手を振ってくれた。
少し前までは見つめるだけだったのに。
私も何とか笑顔で手を振り返し、校門に向かって歩いて行った。
最初のコメントを投稿しよう!