8/16
前へ
/87ページ
次へ
夏休みの初日、私たちは賢人くんのショートフィルムの撮影のために、賢人くんの高校の図書室に来ていた。 ――メイクはしてこないでね。洋服もこっちで用意するから。 賢人くんからそうメールされたものの、ちょっとでも綺麗に映るように、少しだけファンデーションと、薄付きのリップを塗っていた。 賢人くんが持ってきてくれたのは甘い花柄のワンピースで、着替えた後に、器用に私の髪をふわふわに巻いてくれた。 それでも。 こうしてまじまじと見ると、城座くんの顔立ちが整いすぎていて、同じ映像に写ることが恥ずかしいと思う。 「ナオちゃんさ、ちょっとそこの机で台本でも読んで待っててもらえる? 俺たち、あっち行って撮影するから。」 「あ、うん、がんばって」 「ありがと、後でね!」 2人が歩いていくと、辺りは誰もいないので急に静かになった。 今回、撮影は図書室が閉館の日に特別に許可してもらったということで、図書室のシーンは今日を含め2日で撮らなければならない。 私が足ひっぱらないようにしなきゃ…! 言われたように、座って台本をめくり、少ない台詞を何度も読み直した。
/87ページ

最初のコメントを投稿しよう!

56人が本棚に入れています
本棚に追加