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夏休みの初日、私たちは賢人くんのショートフィルムの撮影のために、賢人くんの高校の図書室に来ていた。
――メイクはしてこないでね。洋服もこっちで用意するから。
賢人くんからそうメールされたものの、ちょっとでも綺麗に映るように、少しだけファンデーションと、薄付きのリップを塗っていた。
賢人くんが持ってきてくれたのは甘い花柄のワンピースで、着替えた後に、器用に私の髪をふわふわに巻いてくれた。
それでも。
こうしてまじまじと見ると、城座くんの顔立ちが整いすぎていて、同じ映像に写ることが恥ずかしいと思う。
「ナオちゃんさ、ちょっとそこの机で台本でも読んで待っててもらえる?
俺たち、あっち行って撮影するから。」
「あ、うん、がんばって」
「ありがと、後でね!」
2人が歩いていくと、辺りは誰もいないので急に静かになった。
今回、撮影は図書室が閉館の日に特別に許可してもらったということで、図書室のシーンは今日を含め2日で撮らなければならない。
私が足ひっぱらないようにしなきゃ…!
言われたように、座って台本をめくり、少ない台詞を何度も読み直した。
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