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「あ。」
振り返った先には、向こうの本棚の隣にこちらを向いて佇む城座くんと、その横でカメラを構えている賢人くんがいた。
「あ!ナオちゃんに見つかっちゃった!」
賢人くんがカメラを止めていたずらっ子のようにニッと笑った。
「あれ、いつからここで撮影してたの?」
「ん?最初っからだよ!
ナオちゃんのいい画、撮らせて頂きましたっ。」
「え!?え!?
ど、どうゆうこと!?」
「泉さんのこと、ずっと隠し撮りしてたってことだよ。」
「…んなっ!?」
「ナオちゃん、すーっごく良かったよ!
なんか、恋する乙女~って感じで。
単にナオちゃんの座ってる画と、それを眺める央司が撮れればいいと思ってたけど、ナオちゃんの恋する様子が撮れたから、今後ちょっと台本変えるかも!」
…な!
なんてこった!!!
「ちょ、ちょ、ちょっと待って!!
その映像、見せて!!」
「ダーメ。
ナオちゃんには出来上がるまで見せないよっ!」
「そんな…
ひ、ひどいよ!
隠し撮りなんて…
前もって言ってくれたって…」
さっきまでの自分を思い返すと、そこには独りでニヤニヤしているキモチ悪い女しかいない。
ショックを受ける私の気持ちを知ってか知らずか、賢人くんは、
「ごめんね。
だってさ、ナオちゃん、言ったら演技できないでしょ?」
と、例の困ったわんこの顔でこちらを見てきた。
う…
やめて、そのウルウル目!
賢人くんには適わないので、共犯の城座くんに非難の矛先を向けようと見ると、城座くんは、端正な顔で極上のスマイルを放ってきた。
こ、この2人…!
恐るべし…!!
「大丈夫だよ、泉さん。
携帯見ながらにやけてたけど、遠目からだから、そこまで顔も崩れてないから。」
ぐぅ…
相変わらず、城座くんからの正直すぎるお言葉に、完全にノックアウトした。
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