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「さーてと!
西日がいい感じに射してきたね!
そろそろ今日のメイン撮ろっか!」
ウジウジとまだ引きずっている私を余所に、賢人くんは準備を始めた。
どうやら、いよいよ、キスシーンを撮るようだった。
心臓が急にドキドキとしだし、私はポケットに忍ばせたブレスケアを取り出して何粒かをボリボリと一気に噛み砕いた。
そんな私の様子を、城座くんが眉間に皺を寄せて見ていた。
「あのさ。
期待させて悪いけど、本気でキスするわけじゃないから。
ってか、仮に実際キスするとしてもそんなに飲むなんて、舌入れるわけじゃないんだから…」
「わ、わかってます!」
一気に恥ずかしくなり、うつむいた。
しかも、城座くんの「舌を入れる」という発言で、先日の宮ちゃんのキスシーンが蘇り、ますます熱くなった。
「ちょっと、央司。
大事なシーンの前なんだから、あんまりナオちゃんいじめないでよ!」
賢人くんが救いの手を差し伸べ、そのまま撮影の手順を説明してくれた。
机で眠ってしまった私の姿を発見した城座くんが近寄るシーン、そして、隣に座りそっとキスをするシーンの2つをアングルを変えて撮るということだった。
キスのところは、城座くんの頭側から撮るので、実際は顔が近づくだけということだった。
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