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…え…? その柔らかな感触と温度の意味を理解しようとしている内に、それはゆっくり離れていった。 そばにあった気配が消え、少しの間の後に、賢人くんのカットの掛け声が聞こえた。 まぶたをゆっくりと開け、体を起こす。 さっきの、って…? 目で城座くんを追うと、賢人くんと一緒にノートパソコンを覗き込んでいた。 そして。 チェックが終わると賢人くんはもう一度撮り直すと言った。 「え、もう一度?」 「うん、今の良かったけど、ちょっとアングル変えたいんだ。 今度は机の正面から、2人の顔が近づくのをアップにしたいんだよね。 あ、ナオちゃんはさっきと同じようにしてくれればいいからね!」 「う、うん…」 複雑な気持ちを抱え、城座くんをちらっと見やると。 城座くんもこちらを見ていた。 ドキ… 薄茶色の綺麗な瞳が、思いがけず真っ直ぐに見つめていたので なぜか私のほうがいたずらが見つかった子どものような居たたまれない気持ちになり、ぱっと目を逸らしてしまった。 すると。 「何してんの、泉さん、撮影続けるよ。」 と、席に座るように促された。 何事もなかったかのように撮影は再開し、先程とは違って、もう唇が触れることはなかった。
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