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綻んだ顔が元に戻る気配を見せない真由美。
軽い足取りで海の家に隣接する脱衣所まで行く。
(まったく、ぶっきらぼうと言うか、なんというか)
熱い砂浜が今では何とも感じなくなる。
何も考えずに歩いていると大きな衝撃が真由美を襲う。
「きゃっ」
「ぐっ」
心ここに有らず。浮き足だった真由美は、人とぶつかってしまう。
「ちょっと、どこ見て歩いてんだよ」
橙色の長い髪をした少女が、尻餅をつきながら真由美を睨む。
「す、すいません。怪我はありませんか?」
真由美はそう言うと、手を差し出す。
「大丈夫」
しかし、橙色の髪をした少女はその手を掴むこと無く一人で立ち上がる。
手を出したまま一瞬固まる真由美だが、直ぐに体制を立て直す。
「おばさん、気を付けて歩けよ」
少女はそう言うと視線を反らし、砂を払うと脱衣所へ入っていった。
「おば……」
真由美はそう呟くと、同じく脱衣所へ入っていった。
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