Crossing

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思い思いの一時を過ごす、海の観光客達。 芸術品を創る者。 友情に目覚める者。 夏の一時を楽しむ者。 そして、演奏しようとする者。 『只今より、海の家スタッフによるウクレレ演奏がございます』 流れた放送を耳にした観光客達が、ちらほらと特設ステージに目を向け始める。 「あれは」 観光客の内一人。真由美が、ステージに上がる青年をみてそう呟いた。 「知ってるのかい、あれを」 成瀬が返す。 「えぇ、私をナンパしようとした男です」 真由美はそう言うと椎名の方を向いた。 「それは……後で教育が必要ですね」 不意に女性が歩み近寄ってきた。 「おぉ、愛美。奇遇だな」 「手伝いは無用よお兄ちゃん」 どうやら二人は兄弟のようで、笑い会う二人の目は笑ってはいなかった。 「えぇっと、成瀬さんの妹さんなんですか」 「あ、はい初めまして“成瀬 愛美”といいます」 「初めまして、私は“赤城 真由美”こちらに居るのは……」 「どうも、真由美さんの仕事のパートナーをしています“椎名 祐希”と申します」 真由美の言葉を遮るように、椎名が口を挟んだ。 ムスッとした顔で真由美が見るが、椎名は見ようとはしない。        
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